【以前のコラムはコチラ】
以前のコラムでは、代表的な5種類のアルミ合金について、切削加工を依頼する際に知っておきたい違いを整理しました。
今回は、一般機械部品や板金部品で広く使われているA5052を深堀りします。
A5052は耐食性と加工性のバランスがよい材料
A5052は、マグネシウムを主な添加元素とする5000系のアルミ合金です。
耐食性、成形性、溶接性がよく、カバー、ブラケット、筐体、一般機械部品など、幅広い用途に使われています。切削加工だけでなく、曲げや溶接を伴う部品でもよく見かけます。
A2024やA7075のような高強度アルミ合金には及びませんが、すべての部品に最高強度が必要なわけではありません。
必要な強度を満たしながら、耐食性や加工方法とのバランスを取りやすいことがA5052の特徴です。
一般機械部品のイメージが強い材料ですが、航空機関連でも使用されます。
高い強度を必要としない部分では、耐食性、成形性、溶接性などを生かしてA5052が選ばれることがあります。
A5052は非熱処理型アルミ合金
A5052は焼きなましなどの加熱処理は行われるものの、A6061-T6のように熱処理によって強度を高める合金ではありません。
そのため「非熱処理型アルミ合金」に分類され、強度は主に圧延などによる加工硬化によって得られます。
【調質の種類例】
O…焼きなまし材
H32…加工硬化後に安定化処理を行った1/4硬質材
H34…加工硬化後に安定化処理を行った1/2硬質材
H112…熱間加工などによって成形された状態で供給される材料 厚板やプレート材でよく用いられる
Hは加工硬化の意味です。 例えばH32の場合、
H3:加工硬化後に安定化処理を行った状態
2:硬さの度合い(1/4硬質)
を表しています。
このように同じA5052でも、調質によって硬さ、強度、成形性などが異なります。図面にA5052とだけ書かれている場合は、必要な調質まで確認しなければ材料を正確に手配できません。
また、厚板から切削する場合には、一般的な圧延板のほか、板厚精度、平坦度、残留応力などに配慮した精密加工用厚板が選ばれることもあります。
JIS規格番号から板か棒かを読み取る
図面には、素材が「板」や「棒」と直接書かれていないことがあります。
例えば100×100×20mmの部品だからといって、図面寸法だけを見て「板から切り出す部品だろう」と判断するのは危険です。
材質がA5052で、適用規格がJIS H 4000であれば板材、JIS H 4040であれば棒材として読み取ります。
JIS H 4000は板・条・円板などの圧延材、JIS H 4040は棒・線などの押出材や引抜材を対象とする規格です。
図面寸法だけを見て材料を選ばず、材質、調質、適用規格をセットで確認することが重要です。
5000系は傷のトラブルにも注意する
当社の経験では、A5052を含む5000系アルミ合金は、加工後の取り扱いや運搬時に表面傷が問題になりやすい傾向があります。
もちろん、A6061やA7075などにも傷は付きます。しかし、5000系は加工後の取り扱いや製品同士の接触によって、表面に擦り傷が付くことが多くあります。
加工が完了した製品を一般的なプラスチック箱に入れるだけでも、運搬中の振動や製品同士の接触によってスクラッチ傷が付くことがあります。
箱の中に切粉が残っていれば、それが製品表面を傷付ける原因にもなります。
寸法が図面公差に入っていても、外観面に目立つ傷があれば、品質上の問題になる場合があります。特に外観部品、表面処理前の部品、素材面を残す部品では注意が必要です。
【加工後に傷を付けないための対策】
当社では、加工後の製品をそのままプラスチック箱に重ねて入れず、傷防止用の箱やクッション材を使用しています。
傷対策は、機械加工が終わった後だけの作業ではありません。機械から取り外すとき、測定するとき、工程間で移動するとき、洗浄するとき、梱包するときまで、製品に触れるすべての工程で必要になります。
加工精度を守ることに加えて、完成した表面を納品まで維持することも、切削加工における品質管理の一部です。
同じ5000系にもA5056やA5083がある
5000系でよく使われる材料には、A5052のほかにA5056やA5083があります。
A5056はマグネシウム含有量が比較的高く、丸棒や引抜材で見かけることが多い材料です。アルマイト後の外観を重視する部品にも使用されます。
A5083は、非熱処理型アルミ合金の中でも高い強度を持つ材料です。
構造部材や強度が求められる用途で使用されます。
同じ5000系でも、強度、素材形状、流通性、表面処理後の外観などが異なります。加工しやすさや入手しやすさだけで、別の材質へ置き換えることはできません。
まとめ
A5052は、耐食性、成形性、溶接性のバランスがよく、一般機械部品から航空機関連まで幅広く使われるアルミ合金です。
身近な材料ですが、調質、素材形状、適用規格まで確認する必要があります。また、当社の経験では、A5052を含む5000系は傷のトラブルが起きやすく、加工後の取り扱いや保管方法にも注意が必要です。
当社では、加工精度だけでなく、傷防止用の箱やクッション材を使い、工程間の移動から梱包まで製品表面を傷付けないように管理しています。
当社のA5052切削加工事例:
https://www.tukahara-ss.co.jp/blog/case20/
保有設備・加工範囲:
https://www.tukahara-ss.co.jp/equipment/
材料の指定や加工方法、加工後の外観品質でお困りの場合は、図面、材質、調質、適用規格、必要な材料証明書の内容と併せてご相談ください。
図面を添付して加工・見積もりを相談する:
https://www.tukahara-ss.co.jp/contact/
※規格、製造範囲、在庫状況はメーカーや材料商社によって異なります。実際の材料手配時には、最新の規格、仕様書、材料証明書をご確認ください。


