航空機・防衛関連の部品加工では、アルミ(A6061、2024)、ステンレス、インコネルなど多様な材料を扱い、さらに薄肉・複雑形状の加工が多くなります。
今回は、ハイヘリカルエンドミルを使用した時に起こる
・ハイヘリカルエンドミルがホルダから抜けた
・薄板加工でハイヘリカルを使ったことで、むしろ仕上がりが悪化した
というトラブルについて取り上げます。
弊社でも経験したことがあるこれらの問題はなぜ起きるのか?
どうすれば防げるのか?
本稿では、各問題を考察しながら実務的な対策をまとめます。
※このコラムは弊社社長のつぶやきのため、内容の正確性は保証できません。
なぜハイヘリカルエンドミルは「抜けやすい」のか
ハイヘリカル(強ねじれ)エンドミルは、
切れ味が良く・切削抵抗が小さい というメリットがあります。
しかし同時に、
軸方向の引き抜き力が大きくなる
という特性があります。
この軸方向力によって、把握力の弱いホルダでは工具が少しずつ抜ける現象が起きます。
弊社のケースでは、Φ20刃長75mmのハイヘリカルエンドミルをケナメタル製Φ20油圧チャックで保持していても、
A6061の側面加工をサラサラ当てただけで数ミリ抜け、バイス上部とぶつかり一瞬でエンドミルが粉々になりました。
かなり大きな引っ張る力が働いています。
把握力が弱いホルダでは抜ける・・・というか、高効率で側面加工をする場合だけは抜け防止ロック機構があるホルダを使わなければ加工できません。
私の感覚として、チップ式カッターと同レベルの切削量をエンドミルの側面切削に求めるような加工だと、抜け防止機構が必要なように思います。
薄板加工では「ハイヘリカルが逆効果」になる理由
薄板・薄肉の航空機部品(A6061、A2024など)では、
ハイヘリカルが以下の悪影響を生むことがあります。
● 薄板が持ち上げられる
ねじれ角が強いほど、ワークを上へ引き上げる力が増えるため
→ 反り・歪み・びびりが発生
● 仕上げ面が安定しない
ワーク剛性が低い場合、
→ 弱ねじれの方が切削抵抗が安定する
実際に弊社では銅合金の薄板立壁を段彫りで加工する際、
・ワークが微妙にたわむ
・段彫り部で段差発生
・面粗度が悪化
という問題が発生しました。
同条件で30度の弱ねじれ工具に変更したところ、反りが減って寸法も安定しました。
ただアルミ合金は、アルミ合金専用エンドミルNS工具のALZ345などの優秀なエンドミルを使えば、よほど剛性の低い立壁でない限り問題は発生しません。
ワークの反りについては、刃先Rのあるなし、工具欠損の方が影響していると思います。
今回の学び
ハイヘリカルエンドミルで高効率加工をしたいなら、抜け防止ホルダは必須!
とはいえ抜け防止ホルダは持っていないという場合…
逆にカッターの方が安定して加工できることが多い。
一律ハイヘリカルエンドミルが良いというわけでは無いので、よく考えて工具を選定する。

